金融取引の世界標準SWIFT 1

SWIFTコラム

著者:齋藤 隆之(チーフコンサルタント)

 銀行の決済業務は各国が制定した決済システムの中で稼働しています。日本では全銀システムという独自のインフラがあり、そこで決済業務が行われています。送金を行う際には受取人名をカタカナで入力するやり方で、皆さまにも馴染みのあることと思います。ATMでもモバイルバンキングでも、企業のファームバンキングでも、実際の銀行間決済はこの全銀システムで行われています。海外でも同様に、それぞれの国が制定した決済システムがあり、言語が英語のところもあれば、自国語のところもあります。これらは、それぞれの国における歴史を背景に発展してきていますので、入力項目やコード等、国によって異なって参ります。

 それだけでは、国境を越えたクロスボーダーの決済取引ができないので、世界共通のSWIFTという仕組みが存在します。海外送金を取り扱える銀行はこのSWIFTに加盟しています。SWIFTは海外送金だけではなく、貿易取引、為替取引も取り扱っており、取引の種類ごとにメッセージに番号が振られ、入力フォーマット(ルール)が決まっています。元々、銀行間のメッセージでしたが、事業法人がこのSWIFTネットワークに参加して、やり取りを行うことも徐々に増えてきました(事業法人が参加するには、金融機関並みの要件を求められるので、要求されるセキュリティを満たす体制構築が必須で、かなりの体力を要します)。キャッシュマネジメント、トレジャリーマネジメントの世界では、世界の様々な銀行口座の情報を集約するのに、このSWIFTのメッセージを活用することが極めて多いのです。なぜならば、フォーマットが決まっているため、一つのシステムに情報集約するのにふさわしいからです。口座情報は900番台、送金指図は100番台のメッセージを使います。財務管理体制の高度化を行うには、まずは世界各国の銀行口座情報をリアルタイムで把握することで、効率的な資金繰りを実現することが第一歩です。

 これだけを見ると、容易に全世界の銀行口座情報が取得できるように見えるかもしれません。メッセージを送ってもらう場所(通常CMSやTMS、事業法人が取得した独自のSWIFTアドレス)を指定して、受信テストを行って、独自コードの解釈をしてという作業が事前に必要になります。これらは通常、口座保有人のタスクとなり、こうした作業は取り扱いに慣れていないと相当の時間を要してしまい、本来の目的である「銀行から直接受信した口座情報」を用いた的確な財務管理に割くべき時間がなくなってしまう恐れもあるのです。また、この口座情報の電子的な発信手数料は、自行のCMSでないシステムに発信することになるため、比較的高価に設定されていることが多いです。私がキャッシュマネジメントの仕事を始めたころに、1口座1か月100ドル(=当時のレートで12,000円)と設定しましたが、未だに幾つかの銀行で同レベルの値付けをしているところが見受けられます。実際の電信及びシステムコストはそれほどかかっていないケースが多いので、状況によっては交渉可能な場合もあります。これも経験値があると交渉もやりやすくなります。さらに、稼働後に起きうるメッセージ未受信等のトラブルシューティングというタスクも発生するので、技術的なタスクはノウハウのあるTCJ等にアウトソースした方が効率的です。

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