200ヵ国・地域の決済を担うSWIFT

SWIFTコラム

著者:大田 研一(アドバイザリー)

ロシアのウクライナのへの侵攻により欧米及び日本などが制裁としてロシアをSWIFTから排除するとの報道がされ、財務に馴染みのない方にもSWIFTって何と気になる組織になりました。

私自身も、米国駐在時代の1994年に当時のチェースマンハッタン銀行が主催するSWIFTセミナーに招待されベルギーのブリュッセルを訪問するまで、ほとんど馴染みのない組織でしたので知らなくても仕方ありません。しかし、グローバルに銀行口座の残高や入出金データを取得する「資金の見える化」を担う財務スタッフの方には絶対に理解していただかなくてはいけないものです。

SWIFTとは、銀行など金融機関を結ぶ情報通信サービスの運営団体のことで、Society for

Worldwide Interbank Financial Telecommunicationの略のことです。1973年に協同組合方式で発足し世界の銀行などの金融機関が出資しています。本部はさきほど述べたようにベルギーのブリュッセルにあり、現在200超の国・地域の1万1千以上の金融機関などが利用し、国境をまたいだ送金情報を電子的にやり取りするインフラで、海外送金の事実上の国際標準になっています。海外での銀行取引を考えるときにSWIFTに加盟しているかどうかで口座情報をとれるかどうかに大きな影響があります。

SWIFTは、もともと銀行向けのネットワークとしてスタートしたため、当初は、銀行の顧客である「事業法人」は、SWIFTのネットワークに直接アクセスすることは認められていませんでした。1998年には、一部のメッセージ(コンファメーション)についてのみアクセスが認められ、2001年には特定の金融機関が、自行の顧客グループに対して、自行との間をSWIFTのネットワークで結ぶ「MA-CUG」 という方法で、限定的に事業法人のSWIFTネットワークにアクセスが認められました。それにより、我が国の事業法人では初めてMA-CUGによりSWIFTのネットワークへの接続をおこなったのは、パナソニックで同社では、全世界の600社のグループ企業の資金・為替・対内決済を集中管理する「グローバル統合管理システム」(PATRES)を構築し、2007年に全世界に展開している最初の事例となりました。一部の大企業に限られたSWIFTの活用も今ではグローバルに事業展開する企業なら誰でも可能な時代になりました。

ところで、SWIFTから排除されると国際送金が出来なくなるため、経済制裁の手段としてこれまでも注目を集めてきました。イランの銀行が2012年と18年と2度にわたり米欧などの制裁を受けてSWIFTから排除され多ことで原油の支払を受け取ることが出来ない厳しい状況になったことが報道されています。特に基軸通貨ドルを握る米国もSWIFT事態を制裁対象にすることで、参加金融機関の排除を求めることができることが、軍事力に加え米国の最大のパワーの一つと言えます。

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