銀行員から見たキャッシュマネジメントサービスとマルチバンク

銀行接続コラム

著者:齋藤 隆之(チーフコンサルタント)

私自身はメガバンクの本部とグローバルバンクの東京支店でキャッシュマネジメント部を20年以上経験しており、主にプロダクトマネジメントとして、キャッシュマネジメントサービスの商品開発、製品初期のお客様導入、お客様固有のご要望へのソリューション構築・提供、金融庁・日銀のワーキンググループへの参加による決済高度化提案に携わって参りました。銀行員にとって一貫しているのは、キャッシュマネジメントサービス(CMS)はお客様に自行または自行グループの口座を存分に使っていただくための補助ツールであることです。つまり、自行または自行グループの口座を使っていただくことで、預金が滞留し(ゼロ金利の今は事情が異なりますが)、資金移動に伴う手数料が都度発生し、口座を基に為替やFX、貸出等の取引へ拡大していくという発想です。ですから、銀行員の立場から見ると、他行の口座を自身のキャッシュマネジメントサービス(CMS)に接続するというのは本末転倒で、他行に収益機会を与えるためのインフラになってしまうのです。

グローバルバンクでは、世界各国に拠点があったため、マルチバンクの話はあまり耳にしませんでしたが、メガバンクではときどき、大企業のお客様から、どうしても外せないという理由で他行接続の要望を受けて、実際にそのお手伝いをいたしました。ただ、いずれの場合も、この話を断ると、国内のメイン取引に影響を及ぼしかねないというレベルの話で例外的に行ったものでした。

一方で、お客様の立場からはいかがでしょう。海外進出されて、現地でご商売される際に、国内のメイン銀行が現地に拠点を有していて、それが商売上問題なく使えれば、メイン銀行が提供するキャッシュマネジメントサービスをお使いになれば、十分かと思います。しかしながら、実際には現地でのご商売の地域が都市部とは限らず、また商売の相手先が多く使う銀行でないと、相手方の使い勝手が悪く、商売に悪影響が出るということもあるのではないでしょうか?そのような海外地域が複数に亘る場合は、TMS等を導入され、それぞれの地域の銀行との接続を行っていく必要性が生まれます。その場合に、銀行特有のメッセージに関するやり取りを、事業法人のお客様が個別に行うというのは、かなりしんどいことではないかと拝察いたします。

大手電機メーカーのグローバル財務体制を80年代から構築された日本CFO協会主任研究員の大田さんと、キリバ・ベリン等のグローバルなTMSベンダーでのマネジメント経験をお持ちの吉田さんにご助言をいただき、今般、銀行接続サポートサービスを立ち上げることになりましたが、正直なところ、当初は今一ピンときませんでした。しかし、上述の経験を思い返してみると、そのお手伝いをさせていただくことで、お客様のグローバル財務管理の基盤が少しでも早く構築でき、その結果、財務の高度化が図れるのであれば、私自身、喜んでご支援させていただこうと決意した次第です。

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